ずぶ濡れの野良犬みたいに疲れ果てて帰ってくると、
「さっきからT内さんがオカダさんの事をずーっと待っているよ。」
と、オレのボスが言う。
オレは腹を空かせた野良犬みたいに受付に向かったよ。
「先日はお電話出来なくてごめんなさい。
ちょっと色々テンパっていまして。
オカダさん、マイコミに転籍してお仕事を続けられるんですね。」
「...あ、イヤ、T内さんに連絡が取れなかったんで、赤坂支社の人に聞いてみたんだけどエントリーした仕事は他の人で話が進んでいるっていうのと、今紹介出来る仕事は無いっていうので、色々考えて、この仕事が好きだし、そういう事にしてしまいました。本当はT内さんと一緒に仕事をしたかったんだけど...。」
「私もオカダさんと一緒にお仕事をしたかったです。残念です...。
でも営業としてまたここに通いますのでその時はまたお声を掛けて下さいね。」
「あ、そういえば簿記、3級だけど受かりました。」
「うわーっ、オカダさんおめでとうございます!!
この調子で2級もいっちゃいましょう。」
彼女の真夏の向日葵みたいな笑顔でそう言われると、オレはノーガード戦法のジョーみたいになっちまう。頑張るよ、S紀。
色々なトークを楽しんだ後、最後に彼女の写真を撮る。
「じゃあ、オカダさんお仕事頑張ってくださいね。一応半年間はアデコからお仕事のご紹介をしない事にしておきますけど、またご一緒できると嬉しいですぅ〜。」
ここで失礼しますと言う彼女をエレベーターまで見送ると、
「オカダさんはもうここの人になりましたね!(笑)
何だか私、嬉しいです。
では今までどうもありがとうございました。失礼致します。」
と、彼女が言う。
「T内さん、またいつか一緒に仕事しようね! お仕事頑張って。」
でも...もうキット会えない事をオレは知っている。
閉じかけるエレベーターに最敬礼をしながら彼女を見送るオレの中にはストーンズの「LOVE IN VAIN」が流れていた。
THE LONG GOODBYE.
君の事を忘れない。ブルース。

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